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合同会社トランスV

自律評価経済と、社会を変えようとする思想|共感資本社会・脱成長・社会的連帯経済・コモンズとの違いと接点

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社会を変えたいという構想は、数多くあります。描く未来が近いものも、少なくありません。違いが出るのは、「何を変えれば、その未来が来るのか」という部分です。

なぜ、社会思想を比較するのか

このページでは、真決DAOが駆動させようとしている「自律評価経済」を、ほかの社会変革の思想と並べて整理します。取り上げるのは、共感資本社会(株式会社eumo)、斎藤幸平さんの脱成長とコモンの思想、社会的連帯経済、エリノア・オストロムのコモンズ研究です。あわせて、減価する貨幣と地域通貨の系譜、分散的な資金配分の試み(Plurality・二次資金調達)にも触れます。

論文での自律評価経済の定義は、次のとおりです。真決DAOは、この経済を駆動させるためのプラットホームです。

自律評価経済とは、お金の流れを可視化し、公衆の眼に晒し、評価されることで、人々がお金の使い道を自律的に整えるようになる経済である。

比べる目的は、どれが優れているかを示すことではありません。それぞれが何に重心を置いているかを明らかにし、互いに補い合える点と、一緒に考えられる問いを見つけることです。

どの思想も、このページに書ききれない広がりを持っています。ここでの要約は、自律評価経済との接点を探すための整理であり、それぞれの思想の全体像ではありません。誤りや足りない点があれば、ご指摘ください。真決DAOについては、「いま動く」「検証中」「構想」と、まだ確かめられていない因果(仮説)を分けて書きます。

社会思想の違いと共通点

共有している診断

自律評価経済の問題意識は、ほかの多くの思想と重なっています。

  • 外部化による成長の限界
    環境・ほかの地域・未来の世代に負担を押しつけることで、成長が成り立ってきた。論文では、斎藤幸平『人新世の「資本論」』、水野和夫『資本主義の終焉と歴史の危機』、Jason Hickel『Less is More』を、この診断の根拠として引いています。
  • お金で測れない価値が、資源の配り方から漏れている
    共感資本社会や社会的連帯経済と近い問題意識です。
  • 「市場か国家か」の二択では足りない
    オストロムの多中心的ガバナンスと同じ方向を向いています。

そのうえで、自律評価経済はひとつの見立てを加えます。外部化も、お金と価値の逆転も、お金の流れが見えないことを前提に成り立っているのではないか、という見立てです(仮説)。

人類の抱える根源的な課題は、各人が如何にお金を稼ぐことに注力していては解決が出来ない。個々人が如何に価値があることに注力したときにはじめて解決出来る。進化の道を歩んでいるようで、地球を蝕む退化の道を歩んでいる。

小林祐也(合同会社トランスV 代表)

何を起点に変えるか

どの思想も複数の側面を持っていますが、変化の起点として重く置いているものを並べると、次のようになります。

  • 共感資本社会(eumo)
    共感でつながる個人・組織・コミュニティ。3か月で失効する通貨、学びの場、コミュニティづくりを組み合わせて実践している
  • 斎藤幸平さん
    コモン(市民の共有財)を取り戻し、民主的に管理すること。市民の参加、自治体の改革(ミュニシパリズム)、労働者協同組合などを通じて、使用価値を重んじる経済へ移ること。2026年の著書では、参加型の計画経済も論じている
  • 社会的連帯経済
    人と社会的目的を資本より優先し、民主的に運営される組織(協同組合・共済・NPOなど)と、それらが地域や公共政策と結ぶ連携
  • オストロム
    当事者が自らルールを作り、互いを見守る自治の制度。そうした制度が幾重にも重なり合う、多中心的な統治
  • 自律評価経済
    誰もがすでにしている「お金を使う」行為と、誰もが持つ承認欲求

自律評価経済の出発点は、「価値観は、説得では変わらない。変わるのは、条件が変わったときである」という仮説です。「こういう価値観を持ちましょう」とは言わず、人が自ら価値を探したくなる条件を設計します。これは確立した法則ではなく、構想の中心にあり、これから確かめていく仮説です。

共感を、どこに置くか

この点で、共感資本社会と自律評価経済は、重心の置き方が違います。共感資本社会は、共感を中心に経済的な関係を形づくろうとしています。eumo の新井和宏さんは「スピードがあっても共感していない参加者が増えてしまっては意味がありません」と語っています(日立 Linking Society、2022年)。

自律評価経済は、理念への共感を参加の前提にせず、評価される条件を変えることで、行動の変化を促そうとします。日本円(法定通貨)の経済の論理から見ても、参加する得がある設計を目指しています。

どちらが正しいかではなく、何に重心を置くかの違いです。理念を共有することで、参加者のあいだに共通の規範や信頼を形づくりやすくなります。理念への共感を前提にしなければ、より多くの人が入りやすくなる可能性がありますが、規範や信頼にあたるものを、仕組みの側で育てなければなりません。

何を手がかりに、評価し、決め、配るか

それぞれの構想は、制度の形が違うため、同じ物差しでは比べられません。ここでは、評価・意思決定・資源配分の主な手がかりを、何に置いているかで並べます。

構想評価・意思決定・資源配分の主な手がかり
市場価格(いくら払われたか)
eumoギフト(誰がどれだけ応援したか)
斎藤幸平
さん
民主的に管理されたコモンと、参加型の計画(社会として何が必要か)
社会的
連帯経済
組合員・当事者による民主的な意思決定(出資額によらない一人一票)
オストロム当事者による見守りと、合意した制裁
二次資金
調達
支持した人の数
真決DAO公衆による、お金の使い方への評価(いいね・共鳴・信任)

日本円(法定通貨)との関係

構想日本円・法定通貨との関係
eumo日本円でチャージし(1単位=1円)、加盟店は日本円で精算できる
キーム
ガウアー
ドイツの地域通貨。ユーロと1対1で交換し、ユーロに戻すときに手数料がかかる
日本の
地域通貨
デジタル地域通貨の多くは、日本円で購入する
二次資金
調達
配る資金は、外部のスポンサーが出す
真決DAO日本円でトークンを買えず、日本円に換える市場もない。日本円は、外部の資源を調達するためにだけ使う

真決DAOの線は、最も強く日本円と切り離しています。評価の原理を守る点では強みです。一方で、入りやすさ、とくに供給する側にとっては、最も重い条件になります。

互いに補い合えること

「真決DAOが差し出せるもの」は、相手が必要とする場合に役立ちうるもの、という意味で書いています。それぞれの思想を、真決DAOの一部として位置づける意図はありません。真決DAOが学ぶべきことのほうが、多いと考えています。

共感資本社会(株式会社eumo)

「共感という貨幣換算できない価値を資本として育み、共感をベースとして経済活動を含む様々な活動をしていける社会」を掲げ、共感コミュニティ通貨・学びの場・コミュニティの事業で実践しています。通貨には3か月の有効期限があり、失効した分は、加盟店にギフトを贈った額に応じて利用者に戻されたり、コミュニティの活動に使われたりします。公式サイトでは、参加ユーザー1.7万人超・加盟店400店超の通貨と、32のコミュニティ通貨が紹介されています。

  • 重なるところ:お金で測れない価値を、経済の中で見えるようにすること。貯め込ませない通貨。お金に気持ちや理由を載せること。中央集権から自律分散へ、という方向
  • 違うところ:共感を中心に関係を形づくるか、理念への共感を前提にせず評価の条件を変えるか、という重心の違い。日本円との関係(eumo は日本円でチャージし、加盟店は日本円で精算できる。真決DAO はどちらもできない)。見え方(eumo はお店と利用者の関係が見える。真決DAO は一人ひとりの支出の使い道と理由が、関係のない人にも見える)
  • 真決DAOが差し出せるもの:コミュニティの外の人にも使い道が見え、同じ使途に支出できる回路。まだ満たされていない需要を置ける場
  • 真決DAOが学びたいこと:人が集まる仕組み。加盟店が日本円で精算できることが、参加しやすさにどう効いているか。失効分を戻すルールを作り直してきた経験
  • 一緒に考えたい問い:3か月で一度に失効する設計と、毎日少しずつ減る設計で、使われ方はどう違うか

斎藤幸平さんの脱成長とコモンの思想

『人新世の「資本論」』(2020年)で、資本主義の成長が外部化に頼ってきたことを示し、脱成長コミュニズムを提唱しました。使用価値を重んじる経済への転換、労働時間の短縮、画一的な分業の廃止、生産過程の民主化、エッセンシャル・ワークの重視を柱に、教育・医療・住居・水道・電気などをコモン(市民の共有財)として民主的に管理することを説いています。担い手として、市民の参加や、バルセロナなどの自治体の改革(ミュニシパリズム)、労働者協同組合に光を当てています。2026年の『人新世の「黙示録」』では、気候崩壊による欠乏の時代に向けて、全体主義にならない参加型の計画経済を探っています。

  • 重なるところ:外部化による成長の限界という診断。使用価値を交換価値より優先すること(価値>お金)。暮らしの基盤を、市場の論理から守ること。地域の自治を重んじること
  • 違うところ:真決DAOは成長を否定せず、真に価値あることを成長と見なします。変化の起点も、市民の運動や制度の改革より先に、日常の支出と承認欲求に置きます。計画については、斎藤さんも全体主義にならない形を探っていますが、真決DAOは、地域ごとの需要が下から見えることに重心を置きます。地域ごとの需要は、その地域に根ざした人にしかわからないと考えるからです
  • 真決DAOが差し出せるもの:『人新世の「黙示録」』は、計画に必要な知識をどう集めるかという「ハイエクの問い」を正面から扱っています。需要の発酵池は、参加型の計画にとって、下からの需要の情報源になりうると考えています
  • 真決DAOが学びたいこと:地球の限界(資源・排出の上限)を、評価の中にどう入れるか。承認欲求を動力にすることが、見栄の消費を強めないか
  • 一緒に考えたい問い:下からの需要の可視化は、参加型の計画をどこまで支えられるか

社会的連帯経済

協同組合・共済・NPO・社会的企業などが担い、人と社会的目的を資本より優先する経済です。担い手のつながりは、生産・消費・金融・ケア・地域づくりなどの幅広い分野に及び、フランスの2014年の法律のように、国の制度として位置づける例もあります。国際労働機関(ILO)は2022年に定義を採択し、国連総会も2023年にそれを承認しました。日本では、2022年に労働者協同組合法が施行されています。

  • 重なるところ:人と社会的目的を資本より優先すること。出資額で議決権が変わらない協同組合の原則と、日本円で評価を買えない真決DAOの線は、同じ方向を向いています。透明性と説明責任を大切にすること
  • 違うところ:社会的連帯経済は、組織の形(誰が所有し、誰が決めるか)を変え、地域での連携や公共政策を通じて、経済のあり方を人と社会的目的の側へ組み替えようとしています。真決DAOが変えようとしているのは、個人・企業・ストアなど、どんな主体の支出にも共通する「評価の回路」です
  • 真決DAOが差し出せるもの:組織の支出が理由とともに可視化され、組合員でない人も同じ使途に支出できる回路
  • 真決DAOが学びたいこと:民主的な運営の実務。参加者がルールを決める仕組みは、真決DAOではまだ構想段階です
  • 一緒に考えたい問い:協同組合やNPOの支出が見えるとき、組合員でない人からの共鳴(同じ使途への支出)は生まれるか

エリノア・オストロムのコモンズ研究

2009年にノーベル経済学賞を受けたオストロムは、漁場や灌漑などの共有資源を当事者が自ら管理してきた事例を数多く調べ、「市場か国家か」の二択を退けました。長く続いた制度に共通する設計原理と、多くの意思決定の中心が重なり合う「多中心的ガバナンス」を示しています。

  • 重なるところ:画一的な政策は効かないという立場。地域の当事者に判断を置くこと。情報と評判が協力を支えるという見方
  • 違うところ:オストロムの研究は、事例から規則性を見つけた診断の枠組みです。真決DAOは、一つの設計された制度です。また、オストロムが重視した「当事者が合意した段階的な制裁」を、真決DAOは置いていません
  • 真決DAOが差し出せるもの:お金の使い道と需要が見える、広く共有された情報の基盤
  • 真決DAOが学びたいこと:ルールを使う人がルールを変えられること。オストロムの実験では、自分たちで合意した制度を選んだグループが最もよい成果を出し、外から課した規制は自発的な協力を弱めました。いまの真決DAOでは、ルールを運営が決めています
  • 一緒に考えたい問い:制裁を置かず、可視化と評判だけで協力は保たれるか

減価する貨幣と地域通貨の系譜

持っているだけで目減りする貨幣は、シルビオ・ゲゼル(1916年)にさかのぼり、1930年代のオーストリア・ヴェルグル、2003年に始まったドイツのキームガウアーなどで試されてきました。日本でも、2000年前後に多くの地域通貨が生まれています。真決DAOの減価するトークンも、この系譜にあります。

  • 真決DAOが学びたいこと:日本の地域通貨の研究では、停滞の主な理由は、中止が増えたことより、新しい立ち上げが止まったことにあり、補助金が終わると活動も終わる例が多いと報告されています(泉・中里、2023年)。また、地域通貨の取引は、すでにある人のつながりを前提にしていたという研究もあります(中里、2009年)。「コミュニティは仕組みの帰結として育つ」と考える真決DAOは、この研究と向き合う必要があります
  • 一緒に考えたい問い:人のつながりが先になくても、使い道が見えるだけで、同じ使途への支出は起きるか

Plurality と二次資金調達

Glen Weyl さん、Audrey Tang さんらの『Plurality』(2024年)は、社会的な違いを越えて協働するための技術を論じています。二次資金調達(Quadratic Funding)は、多くの人の小さな支持を重く見て、公共財に資金を配る仕組みです。

  • 重なるところ:中央の計画でも純粋な市場でもない、分散的な資源の配り方。多くの人の小さな支持を重く見ること
  • 違うところ:二次資金調達は、外部のスポンサーが出した資金を配ります。真決DAOは、外部の資本で評価を増やさない設計です
  • 真決DAOが学びたいこと:身内どうしの支持や共謀への設計。設計者自身が、共謀と不正を中心的な弱点として挙げ、対策を重ねています

どの構想にとっても難しいのは「広がる仕組み」

診断は、ほぼ共有されています。違いは、何を起点に変えるかです。そして、どの構想にとっても最も難しいのは、広がる仕組みです。共感の輪をどう広げるか。運動をどう大きくするか。周縁からどう抜け出すか。地域の取り組みをどうつなぐか。真決DAOも、まだ利用のデータを持っていません。

ここは、思想の違いを越えて、一緒に取り組める問いだと考えています。

自律評価経済が提案する変革の経路

ここからは、自律評価経済が「なぜ社会が変わる」と考えるのかを説明します。真決DAOは、次のように定義しています。

真決DAOは、お金の使途を可視化し、いいねや共鳴(同じ使途への支出)が可能な「お金のSNS」の機能性を持ち、参加者に公衆の評価を意識させ、自律的に「お金の身だしなみ」を整えさせることで、資本主義経済で逆転してしまった、お金と価値の関係性を正常化する経済である「自律評価経済」を駆動させる為のプラットホームです。

真決DAOの中では、真に価値のある為の使途が評価される為、SNSとして自己承認欲求を満たすための追求事項が「如何に価値があるか」となり、人類一人一人の価値観が変わらないと解決できない地球や現状の資本主義経済が抱える根源的な課題(「真」の課題)を解「決」することを目的としたDAOです。

中心にあるのは「価値>お金」です。本来は「価値があるから、お金が集まる」はずです。いまは「お金が集まるから、価値があるとされる」ことが少なくありません。この逆転を戻すことが目的です。

変化の経路を、3つに分けて示します。( )内はいまの状態です。各経路で挙げる研究は、真決DAOを検証したものではありません。仮説を考えるうえで参考にしている、近い状況についての関連研究です。

経路A:お金の身だしなみ

見られることで、自分で整える経路です。

  1. 支出が、理由とともに支出フィードに可視化される(いま動く)
  2. 公衆に見られていることを意識する(仮説)
  3. 自分のお金の使い方を、自律的に整える(仮説)

関連研究として、目の画像のような「見られている合図」は寛大さを増やさなかった、というメタ分析があります(Northover ほか、2017年)。一方で、ポイ捨てなどの反社会的な行動は約35%減ったと報告されています(Dear ほか、2019年)。ここからは、見られることは悪い使い方を抑える方向には効きやすく、良い使い方を増やすには、それだけでは弱いという見通しが立ちます。支出フィードで同じことが起きるかは、これから確かめます。

経路B:評価と伝播

承認欲求の向き先が変わる経路です。

  1. 公衆が使い道を見て、いいね・コメント・共鳴(同じ使途への支出)で応える(いま動く)
  2. 価値ある使い方をした人・プロジェクト・ストアに、信任(トークンを託すこと)が集まる(検証中)
  3. 託されたトークンが、その人の次の行動力になる(検証中)
  4. 共鳴によって、同じ使い道が広がる(仮説)
  5. 「いかに価値ある使い道か」が、そのまま「いかに目立つか」になる(仮説)
  6. 承認欲求の向き先が変わり、一人ひとりの価値観が変わる(仮説)

関連研究として、評判のよい人が後で助けてもらえる場では、公共財への拠出が高く保たれたという実験があります(Milinski ほか、2002年)。信任は、この「評判が資源になる」働きを、経済の中に仕組みとして置こうとするものです。反対に、人に見える場での善い行動にお金の報酬を足すと、効果が薄れたという実験もあります(Ariely ほか、2009年)。どちらも真決DAOの外で行われた実験で、同じことが真決DAOの中で起きるかは、まだわかりません。

経路Aの「見られて整える」だけでは弱く、経路Bの「評判が資源になる」と組み合わさって初めて効く、と考えています。

経路C:需要

声が届かなかった需要に、供給が現れる経路です。

  1. まだ満たされていない「ほしい」が、トークンの拠出とともに需要の発酵池に置かれる(いま動く)
  2. 1件ずつでは声が届かなかった需要が、束ねられて見える(いま動く)
  3. 時間の経過とともに、供給する人へのメリットが育つ(いま動く)
  4. 供給する人が現れて需要が実現し、育った分が、供給した人とトークンを拠出した人に分配される(分配の仕組みは検証中。供給する人が現れるかは仮説)

需要は、個々にばらばらに存在しています。見えないので束ねられず、供給する側からは採算に合わないように見えます。価格がつかないのは原因ではなく、結果だというのが、需要の発酵池の考え方です。

承認欲求を否定しない

どのSNSでも、人は「いかに目立つか」を追います。真決DAOでも同じです。違うのは、目立つための条件です。「いかに価値ある使い道か」を追うことが、そのまま「いかに目立つか」になる。欲求も目的も変えず、目立つための条件を変えます。

3つの経路を支える仕組み

  • 減価するトークン
    持っているだけでは目減りし、やがてゼロになります。受け取ってから数日は満額で、その後は毎日少しずつ減り、約3か月でゼロになる設計に切り替えています(2026年10月に決定)。暦の区切りではなく、生態系のように毎日少しずつ減らします。
  • 日本円との境界
    日本円が入ってくること自体は拒みません。拒むのは、日本円で評価・信任・意思決定の力が買えることです。トークンを日本円に換える市場も、運営は提供しません。資本を持つ人が、経路Bの評価を買えないようにするための線です。
  • エコサイクル・マイニング
    活動に応じてトークンが生まれます。活動の善し悪しを評価するものではなく、活動を続けるためにトークンを供給する仕組みです。動物にとっての酸素、植物にとっての太陽光と二酸化炭素のように、活動に欠かせない基礎の資源にあたります。価値の判断は、公衆の評価という別の回路が担います。

その先にあるもの(仮説)

  • 資源の配り方が、「お金の量」ではなく「お金の使い方への評価」で決まるようになる
  • 地域ごとに、暮らしの基盤(BVI:ベーシック・バリュー・インフラ)が下から形づくられる(構想)
  • 金>価値 が、価値>金 に変わる

ここが最も長い推論の先にあり、最も確かめるのが難しい部分です。機能ごとのいまの状態は、「真決DAOとは」にまとめています。

まだ答えの出ていない問い

真決DAOの構想には、まだ答えの出ていない問いがあります。隠さずに挙げます。

  • 評価されやすい支出と、本当に価値を生む支出は一致するのか
    人気が集まることと、社会的な価値が高いことは同じではありません。両者が一致する条件を明らかにすることが、構想の中核の問いです。
  • 経済圏の内側に、十分な使い道を育てられるか
    日本円に換えられないトークンは、内側に使い道がなければ意味を持ちません。利用する人にとって意味のある使い道があり、供給する人の生業が成り立つことが、思想の正しさ以上に大切な条件です。
  • 見られることは、良い使い方を増やすのか
    関連研究では、悪い行動を減らす効果は報告されていますが、良い行動を増やす効果ははっきりしません。評判が資源になる仕組み(信任)と組み合わせて確かめる必要があります。
  • 活動に応じたトークンが、善意を削がないか
    マイニングは、善い行いへの報酬ではなく、活動を続けるための供給として設計しています。ただ、善し悪しを評価しないことと、報酬目当ての行動が起きないことは別です。行いごとの報酬に見えない形にし、空回りする活動にはトークンが出ないようにする必要があります。
  • コミュニティは、仕組みが生むのか、仕組みの前提なのか
    立ち上げには、考えに共感する少数と、すでにあるコミュニティが要ると考えています。その先で、つながりのない人どうしの共鳴が起きるかが問いです。
  • ルールを誰が決めるのか
    評価は参加者に分散していますが、減価の日数などのルールは、いまは運営が決めています。参加者が決められる仕組みは構想段階です。
  • 地域を越える課題を、どう調整するか
    気候変動や広域のインフラのような課題です。中央が画一的に決めるのではなく、地場で判断できることは地場に置きます。そのうえで、地域どうしをつなぐ層をどう作るかが課題です。
  • 地球の限界を、評価の中にどう入れるか
    暮らしの基盤(BVI)という土台はあっても、資源や排出の上限にあたるものは、まだ設計にありません。

論文でも、確かめるべき問いとして次の4つを挙げています。お金の流れの可視化は、実際に人々の行動を変えるか。使わないと価値が減っていくトークンは、循環を促す効果を持つか。共鳴や信任の仕組みは、評価のインフレを防げるか。プライバシーと透明性の両立は、実運用において成立するか。

一緒に社会の未来を考えませんか

社会を変えようとする構想には、それぞれ異なる強みと、まだ解決できていない課題があります。自律評価経済も例外ではありません。異なる思想を持つ人どうしが、互いの構想を理解し、足りない部分を補い合うことで、社会を変える新しい道筋が見えてくるのではないかと考えています。

真決DAOの構想への批判も歓迎します。どこが成り立たないかがわかれば、直せるからです。そして、皆さんが取り組まれている課題に、真決DAOが役立つ可能性があれば、一緒に探っていきたいと考えています。

とくに一緒に考えたいのは、次の問いです。もともとつながりのない人どうしでも、支出の目的や理由が見えることで、新しい共鳴や経済的な協力は生まれるのか。この問いなら、共感資本社会や社会的連帯経済に取り組む方とも、互いの考えを捨てずに話し合えると考えています。

まずは、オンラインでの意見交換から歓迎します。20〜30分ほど、互いの取り組みについて話すところから始められれば十分です。

その先で、たとえば、すでにあるコミュニティ(数十人〜100人程度)で3か月ほど、参加者の同意のもとで支出を理由とともに可視化し、使い道の変化、コミュニティの外からの共鳴、需要の実現、信任の偏りを見る、といった小さな検証を一緒にできれば幸いです。

研究者や実践者の方に限らず、このページを読んで考えたことがあれば、どなたからのご連絡もお待ちしています。

このページについて

このページは、完成した結論ではなく、対話の記録として育てていきます。いただいたご指摘や、対話から見えたことは、ここに反映していきます。

  • 2026年10月:初版

主な出典

  • 小林祐也「Autonomous Evaluation Economy Through the Visualization of Money Flows: A Case Study of Shinketsu DAO」SSRN、2026年
  • 株式会社eumo 公式サイト、コミュニティ一覧/新井和宏さんへのインタビュー(日立 Linking Society、2022年)
  • 斎藤幸平『人新世の「資本論」』集英社新書、2020年/『人新世の「黙示録」』集英社シリーズ・コモン、2026年
  • ILO「ディーセント・ワークと社会的連帯経済に関する決議」2022年/国連総会決議 A/RES/77/281、2023年/フランス「社会的連帯経済に関する法律」(Loi n° 2014-856)2014年/厚生労働省「労働者協同組合」
  • Elinor Ostrom, "Beyond Markets and States: Polycentric Governance of Complex Economic Systems," American Economic Review, 2010/"A Polycentric Approach for Coping with Climate Change," World Bank, 2009
  • 泉留維・中里裕美「コロナ禍における日本の地域通貨について」『専修経済学論集』57(3)、2023年/中里裕美『社会的行為としてのP2P型地域通貨取引に関する研究』立命館大学 博士論文、2009年
  • Northover et al., Evolution and Human Behavior, 2017/Dear et al., Evolution and Human Behavior, 2019/Milinski et al., Nature, 2002/Ariely et al., American Economic Review, 2009
  • Buterin, Hitzig & Weyl, "A Flexible Design for Funding Public Goods," Management Science, 2019/Weyl, Tang et al., Plurality, 2024
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